メモ帳を整理していたら昔の文章が出てきたので打ち込んでおく。


商業が大企業に独占されたのはこの50年のこと。
規模の経済が個人事業を駆逐した。

大企業は残存していく
大企業は先鋭化していく。
本物の企業の本物の正社員でいることはますます難しくなっていく。

一方、大企業の中で「本当に価値創出している人」は少ない。
価値創出していける人はマーケットにリーチできるようになる。

マーケットと向き合えるのは大企業だけ
規模の経済に地域が巻きこまれていく。
地域をマーケットにしていた中小企業、個人商店はマーケットを奪われて滅びていく
大企業がマーケットのメインストリームを独占しつつある。

一方、ネットによってニッチ市場、ロングテールが拓かれた。地域以外のチャンネルが個人や中小に拓かれた。フラット革命。

フラット革命によって消費者の面前では大企業と個人商店は対等たりうる。

・・・すべてが対等たりえない。
「ものづくり」 Productsは大企業の独壇場。

機械的に量産し得ないもの、手工業品、芸術品
創り手が直接市場にリーチできる。
中抜きによって、規模の経済に対抗する。
(インフラが充分に発達し安価であること)

∴個人が作りえるものを主たる商品としている企業は苦しくなっていく。

個人が作ったものと企業が作ったのの見分けがつかないか、ついたときに個人が作ったものの方が価値があると判定されるときに。

フリーランス

企業にとって「すべてを内製する」意味が失われていく。
企業がすべての機能を内製化していたのは入手困難性と機密性。

専門化したOutSourcerは食える。

専門化が参入障壁を生む。

重要なのは需要。

需要は十分か?
ロングテールだけでは不十分と思われる。
仕事をもらうのでは駄目だ。
仕事をこなすのは価値を生むことではない。もらえる仕事は他者代替可能である可能性が高い。

需要がわかれば、それを満たすことで報酬を得ていける。

誰もが需要のありかを知りたい。

未来のネットが、この需要情報をきちんと流通させるならば、それは中小企業を代替しうる。

企業とは、そもそもが需要を仲介する存在である。
 企業に所属することで仕事を割り当ててもらえる。

仕事がどこにあるか
仕事を手に入れる能力が最も重要。

ネットがそれを代替するなら。。。

観念論

恐ろしいのは失業なのだ。

失業が怖いから、人は企業にしがみついて、どんなつらい仕事もする。

仕事がきちんと流通するならば(食べるものは地球上に充分あるのだから)、お金さえあれば食えないことはない。

お金がないことが問題だ。食べものがないことが問題ではない。

富が偏ることは(それほど)問題ではない。

仕事が(賃金を得る術が)偏ることが問題なのだ。

しかし競争は必要である。

労働はダンピングされている。トイレットペーパが買い占められるように。

企業に勤めるということは、自由を差し出す代わりに、必要量の仕事をもらう権利を得るということ。しかし仕事はチャンクであるので、ときに過小ときに過大である。(そしてほとんどの場合過大である)

「受注できないリスク」を受け入れなければ、自由は得られない。

「経済的自由」は、労働からの自由 ではなく、受注できないリスクからの自由
(受注できないまま迎えてはいけない日を無限遠に遠ざけること)


メモ

おそらく08年の今ごろに書いたと思われる。仕事を辞めるかどうするか悩んでいた頃。

レースフォーザギャラクシー

最近はもっぱらこればっかりやっている。宇宙開拓カードゲーム。
仲間内で非常に流行った「王への請願」ダイスゲームのデザイナーによるもの。すでに昨年秋に拡張パック第1弾が出ている。

カード(惑星や設備)を引いて場に配置する。配置コストは手札をディスカードすることで支払う(軍事力パラメータを比較して多ければ獲得できる「軍事惑星」もある)。
最終的にカードに書いてある勝利点と、物資を貿易することで手に入る勝利点チップの数の合計で勝負。拡張パックからはカタンの「ロンゲストロード」「ラージェストアーミー」のようなゴールタイルが追加された。

紹介記事はいっぱいあるので興味のある人はググってもらうことにして、いきなり攻略論について考えたい。
このゲームはカードゲームであるくせに、ドクトリン(大戦略)>戦略>戦術の3層構造がある。
ドクトリンとはつまり経済で行くのか軍事で行くのか、ということである。これは初期ホームワールドや初期手札、序盤の(おもに6コストDevの)引きでだいたい決まる。ドクトリンが定まればあとの考えどころは大きく2点。もちろん何を配置してどういう銀河帝国を作っていくか、という戦略が1つ、もう1つは、ターンのどのフェイズを実行するかという戦術である。

フェイズは各プレイヤーのうちだれか1人が意思表示すれば実行される。意思表示しなかった人もそのフェイズをプレイすることができる。誰も意思表示のなかったフェイズはそのターンプレイされない。意思表示した人はそのフェイズにボーナスの恩恵を受けられる。
とにかくボーナスが得られるのだから、自分のやりたいフェイズを意思表示して行けばよいという考え方もあるが、効率を考えるなら、相手が出してくるフェイズを読んで、それを回避するように意思表示していくほうが望ましい。第1、第2フェーズ(EXPLORE,DEVELOP)は意思表示ボーナスが比較的大きいので自分で選びたい。一方、第5フェーズ(PRODUCE)などは、単発生産惑星(Windfall)を持っていない限りボーナスがないので、できれば他の人の意思表示にのっかりたい。価値の高いWindfall産物と消費能力のある惑星や施設を同時に抱えている場合は、誰かに第4フェーズ(CONSUME)を発動されて本来なら手札5枚の価値のある産物を1VPや1VP+1手札に変換させられてしまう前に売却して手札5枚にしたい。
・・・といった行動の読み合いの部分で、これを意識するとしないとで発展のスピードがかなり変わってくる。
このゲームは基本的にやりたいことはいつか必ずやれるようになっているのでストレスが少ない、といっしょにやったプレイヤーの人が言っていたが、しかし自分のやりたいことを自分の好きな順番でやっているとどんどん遅れて行くのだ。毎ターン平均してすくなくとも1つは何かを立てて行きたい。

基本的には相手の産物状況と手札を見て行く必要がある。相手の手札が少なければ何らかの方法で補充したいと思っているはずで、高価値の産物を抱えていれば高い確率でTRADEを選んでくるはずだ。こちらは勝手に消費されたくなければ合わせてTRADEを出して行くべきだし、あるいは生産か消費に伴ってドローできるのならばそれを見越してPRODUCEを出していく方がよい場合もある。相手が1ターンでは産物を売り切れないような場合で、こちらは毎ターン全産物を消費しきれるのなら、PRODUCEの連発はこちらのアドバンテージとなる。逆に、相手の手札の補充前のタイミングにDEVELOPやSETTLEを出して行くことで、相手は何もできず、自分だけカードを配置できるようなタイミングも狙って行きたい。

とするならば、相手と自分の手札補充、産物補充のタイミングがかぶっているのはいささか都合が悪いということになる。あるいは、かぶっていてもかまわないが、それぞれの能力で相手を上回っていなければならない。
であるから、戦術で優位に立とうと思うなら、相手の序盤の行動から戦略を推し量り、こちらの戦略を調整して行く必要が有るのである。

相手の戦略を読むためには、そしてそれに対応できる自分の戦略を組み立てるためには、まずこのゲームシステム上でどのような戦略が組み立て得るのかを知っておかなければならない。

このゲームの大戦略は大きく2通り、もちろん軍事戦略と経済戦略の2パターンである。もちろんミックスも可能だが、必要なフェイズの種類が増えてくるのであまりうまく運用できるとは思えない。どちらかに徹底した方がよさそうだ。

もし軍事戦略をとるなら、考えるポイントは2点だ。どのように軍事力を高めるか、どのようにして征服先を確保するか、である。
軍事力上昇の方法は限られている。「宇宙海兵隊」「ドロップシップ」といった装備改良と、エイリアンの軍艦や艦隊などの鹵獲だ。「新軍事戦術」による一時的な攻撃力ブーストは可能だが、これを使用するときは必ずそれによって恒久的な軍事力向上ができなければ先が続かない。
また、征服先確保について、探索による方法と、戦利品売却による方法がある。探索能力のある惑星や設備は総じて軍事帝国と相性が良い。最終的には6コストDevの「SETI」を出すことで勝利点のブーストがはかれる。いっぽう、探索はそれほど行わずとも、エイリアン遺物や知性化種族の遺伝子を売却することで財源確保していく方法もある。この場合、生産はいちいちしていられないので、Windfall産物をもつ惑星を狙って落として行くことになる。こちらがTRADEを選んでいないのに勝手に産物が消費されて行かないよう、消費能力のあるカードは配置しないように気を配っていなければならない。
エイリアンは軍事ワールドが多く、鹵獲による軍事力向上も望め、Windfall産物が多いことから軍事帝国とは非常に相性が良い。「異星技術研究院」と「銀河新秩序」のコンボが理想的だ。
または、銀河帝国を樹立してひたすら反乱軍を探索して制圧して行く方法もある。この場合は軍事力については銀河帝国のボーナスでほとんど心配しなくてよくなるので、反乱軍拠点を見つけ出す探索能力に力を割いて行くことになる。
また、「遺伝子研究所」があればUPLIFT種族の遺伝子から継続的な収入を得られるようになるので、他人のPRODUCEに便乗して産物を確保していける。
軍事系はこれらのミックスによって戦略を組み立てて行くことになろう。

もちろんエイリアンや反乱軍の軍事惑星はコストに対して非常に勝利点が高いので積極的に狙って行くべきだが、得点はあまり気にせずとにかく毎ターンカードを配置し続けて逃げ切りを狙うのも良い。経済系戦略は消費システムが動き出すまでは基本点が低いので、その前に12枚立てきってしまえば20点台前半の勝利点でも勝ち目はある。6コストDevによる得点ブーストがあればさらに心強い。
このことから、拡張パックによって「改良兵站」が出たことの意義は軍事帝国にとって非常に大きい。「改良兵站」が配置できた場合は、高得点カードに固執せず、安価なDevと合わせてとにかく毎ターン2枚以上を配置して行くことを目指すべきだ。「星間銀行」「投資貸付」の両配置でDEVELOPでも常に何か立てられるようにしたい。

だいぶ長くなったので経済戦略については次回。

アグリコラ5人戦ふたたび

今回は私は銀行役に徹して資源の補充と決済に終始し、あとは経験者3人と初体験2名でのプレイ。
初体験2名には15分ばかりインストしてから。生まれたての子供は飯半分しか食わないのを説明し忘れた以外はほぼ周知した上で、職業及び進歩ありのノーマルルールでプレイ。
結果的に、今回もまた3時間以上かかった。
資源補充は毎ターン中に次回分を別トレイに載せておくことでだいぶスムーズにできるようになったけれども、それでもやっぱり複数人が長考するとすげえ時間がかかる。

次回は試みにタイマーありでやってみたい。タイムアウトしたら手番なしは可哀想なので次の人が置いていいルールにする。時間は30秒くらいかな。iPhoneにカウントダウンタイマーアプリを入れてみた。

アグリコラ5人プレイ

微妙だーーーー!!!
プレイ人数が増えるほどたしかに面白い!バッティングが増える!行動選択の重要性が増す!資源が不足する!
でもそれに追いつく勢いで資源補充の煩雑さと、プレイ時間が増加する!
プレイ時間がほんとうにプレイヤー数と正比例するのでつらい。1ゲーム14ラウンド、1人平均3手番くらいあるのでそれぞれ1手番に30秒しかかけなくても5人なら100分!
5人全員が経験者って状況はあんまりなさそうなのでインストしながらだとさらに時間がかかる!経験者2名初3名でやったら3時間以上かかったの巻。

面白さが煩雑さに相殺されている気がしないでもなし。それから、ひたすら経過とジレンマを楽しむゲームで、カタルシスとかとは無縁。困窮を脱するために働き手が欲しくて子を産んで子を食わすために困窮するというジレンマ。他に4人もいると先読みはほとんど不可能。毎ターン苦しむ。その苦しむところがゲーム性、という。プレイヤーの一人がプレイ後感を「マニア向けだなー」と言ってたけどそうだなあ、と思った。

あとまだEデッキしか使ってなくてIデッキKデッキは使ってないんだけれどもいつ投入したものか悩む。あんまりEデッキやりこんでないうちに他のデッキやっても有り難みがわからん気もする。そろそろどっちか投入してみようかとは思ってる。

3人ぐらいでやるのがちょうどいいゲームなのかも知んないなーと思いました。

アグリコラ3人プレイ。

試してみた。ただし「職業」カードと「小さい発展」カードを使用しないファミリールール。

まず第一印象、当たり前だがソリティアや2人プレイとはプレイ感が相当変わっている。とにかく思い通りにならない。
人数が増えたときは追加のアクションカードを場に出して、行動バリエーションが増えるのだが、基本的には資源の入手法が増えるだけで、畑を耕すとか家族を増やすとかのアクションは増えないのだ。
なので、これらの行動タイミングが他プレイヤーとバッティングするとかなり競争
がきつくなる。加えて、多人数プレイでは後手番のデメリットが甚だしいので、定期的にスタートプレイヤーを取りにいかないとどうにもならない。これまた手数を圧迫する。
さらには、かまどやオーブン(翻訳では「暖炉」となってるがパン焼きに使うのだから本当は「天火」だ。多分暖房としても使うんだろうけど、ゲーム的には調理以外の機能はない)といった「大きな進歩」カードも枚数が一定なので競合が激しい。まさか牧畜が順調なのに肉調理手段がなくて困窮するとは思わなかった。

結果、37対31対24で決着。2人プレイなら50点台がふつうに出るので厳しさがわかる。
とはいえ今回はファミリールールだったので、メインルールで職業や小進歩が出てくるとまた違った感じになるのだろう。

昨日の評価では、「理想的に行くとだいたい同じような農家が出来る」と書いたけれども、「理想的に行かなかった場合」の発展の仕方は本当にバラエティ豊かだ。
私は今回のプレイでは高効率のパン焼き釜をごく序盤で手に入れたものの、農業に手がまわらずに最低限毎年パンが焼けるだけの小麦しか入手できず、牧場設備は順調に構築できたが牛と羊が手に入らない上に調理手段がなかったので野豚ばかりむやみに増え、しょうがないので家内制手工業に進出して内職で食い扶持を得るが加工原料の木材が牧場拡大用の柵材とかぶってこれまた先細りといった迷走具合。それでも家族は最終的に5人、マンパワーにものを言わせて石造り4部屋の立派な家に住むことができてなんとか2位であった。
対戦相手は資材を大量に備蓄したものの増築のタイミングを逃して家族3人止まり、広大な放牧地を作りつつ飼っているのは牛2頭のみという閑散とした赤駒家と、毎年毎年食糧カツカツのログハウス住まいながら農業そのものは理想的な展開を見せたバランス紫駒家(トップ)で、まあ特色が出たことよと思う。

ぜひ次回は職業と小発展を入れたメインルールでやりたいというのが全員の感想だった。

…と考えると、1プレイ2時間クラスのヘビーゲームでありながら次またやりたいと思わせるだけの面白さはあるゲームなのだなあ。
コマの取り扱い(とくにラウンド開始時の補充!)だけもっとなんとかならんかなあとは思う。
「テーブル全面にタッチパネルでプレイしたいよね」、というのが昨日の結論。

楽しい農家ライフ! 「アグリコラ」

そしていきなり食料が不足して物乞いライフに!


17世紀中欧、つまり神聖ローマ帝国配下のゆる〜い諸侯連合時代だけれども、そういう雲の上の話はいっこうおかまいなしの開拓農民になっておらが農家を盛り立てるゲーム。
もともとPCゲームでも内政・箱庭経営大好きなところにもって、2008年ドイツゲーム賞1位、シュピールデスヤーレス(ドイツゲーム大賞)複合ゲーム特別賞などなど高評価だったのでついカッとしてAmazonで購入した。

まずは夫婦2人でなにもない農地と掘っ立て小屋でスタートする。
ゲーム目的は14ラウンド以内にゆたかな農家を作り上げることだが、とにかく今年の冬を越せる目処がまったく立っていないので、まずは家族を食わせるために何か考えなければならない。最初の冬は4ラウンド後、最初のうちは1ラウンド2手番なので8手番で一冬分の食料を得なければならない。
食料入手手段は大きくわけて3つ、ひとつは牧畜、ひとつは農業。そして最後が魚釣りやら日雇い労働やらの即金収入。
牧畜は土地を柵で囲って牧場をつくって厩舎をつくって、野原で羊や野豚をひっつかまえて殖やして焼いて食う。
農業は畑をつくって種を仕入れてまいて収穫してパンに焼いて食う。
魚資源は釣ったらなくなるし日雇いは糊口は凌げるけど後にはなんにも残らない。

最初のうちは食料マネジメントに失敗してまだ子を産んでない家畜や植えて増やすはずの種籾を泣きながら食ったりする。まー慣れてくると計画立てられるようになるので、そうそう飢えはしないけれども。


多人数プレイゲームの対戦要素としては、夜中に隣村に潜んでいって種籾を収奪! 夜盗と取引して家畜小屋に放火! 娘の部屋に夜這い! 村八分! ・・・といった攻撃要素は残念ながらほとんどなく、アクションと資源のバッティングが主な要素。つまりそのターン、自分より手番が先の人が畑を耕してしまうと自分は畑を耕せないし、逆に、ここ数年誰も見向きもしていない葦原に行けばごっそりと葦材を入手できる。

基本的には得点表から逆算される「理想の農家」の完成系はじつはほぼパターンがいくつか定まっていて、オリジナリティあふれる俺農家!といったものは基本つくれない(作っても点が低い)。というか、農家だから。ムラ社会だから。あんまヘンテコなのはないですって。ので、クリエイティブにのびのびと箱庭つくるぞー!というのを期待しているとちょっとがっかりするかもしれない。

ただ、完成系は数パターンでも、そこに至るまでの選択肢は非常にバリエーション豊かになっている。だって、第1ターンに全員が木材取れるわけじゃない。ファーストプレイヤーが材木取りに行った時点でじゃあこっちは畑耕しておくか、といったふうに戦略を変えていかざるを得ない。1手番消費して次ターンのファーストプレイヤー権を狙う手もあるけれど、共倒れになって鳶に油揚げを攫われてしまっては元も子もない。
そしてそれに輪を掛けるのが各自に配られる各7種類の「職業」カードと「小さな進歩」カードで、これらには例えば木材が通常の倍取れるとか、家の建増しが簡単になるとかいった特殊効果が書かれていて、しかもこれらが合計300枚以上もあって全て違う効果なのだ。
第3者的に見れば、各プレイヤーがそれぞれ似ているけど違うルールのゲームを、資源だけは共通で争奪しながらプレイしている感覚に近い。

じつはこのゲームで、ゲームスタート以降にランダム要素としてシステムが提供するのは、各アクションが何ラウンド目にプレイ可能になるかという1点だけだ。それもステージが区切られているので、「すくなくとも○ラウンド目までにはこの要素が登場する」というのは確定できる。このゲームは農業を扱ったゲームなので、天候で作物が全滅したりといったアクシデントがありそうなものだが、意外なことにそういう要素はない。植えた作物は毎年きっちり収穫できるし、家畜もきちんと殖える。なので、最初に自分の手札が配られた時点で、究極的には自分がこのゲームで「何をどの順で行うべきか」というのはほぼ確定するのである(パズルゲームとしてそれだけを極めていく1人用ソリティアルールが公式に提供されているほどだ)。

だから、このゲームにおける究極の不確定要素は他プレイヤーなのだ。そして、他プレイヤーの手札(すなわち展開の青写真)は非公開情報であり、行動背景となる手札は母数が莫大であるために、手札が公開(プレイ)されない時点での意図予測は困難であり、事前に対策が打てない。
結局のところ、自分の農場を理想状態へもっていくための「やりたいことリスト」は胸に秘めながら、その場その場の資源状況で許される限りそれに近い手を打っていくしかない、というあたりが、このゲームがプレイヤーに課す制約条件の実体なのだ。
対人戦なのに、相手の意図が読めないので、積極的な妨害はほとんどできない。部屋を増築したから、次は家族を増やしたいだろうなあーとか、魚池にだいぶ魚が溜まってきたからそろそろ獲りたいだろうなー、といったところはある程度読めるが、自分が直接それに競合している状態でなければ、わざわざ妨害すると自分の手番遅れが痛いので積極的に嫌がらせをすることはあまりない。むしろ、何気なーく先手番プレイヤーと意図がかぶっていつまでも羊がとれない、というような時に、1手番つかってスタートプレイヤーを取るか、進歩とか職業をとるか、しばらく使う予定はないけどレンガ溜まってるからとりあえず取っておくか、といった「AプランがだめならBプラン」をいろいろその場その場で考えて切り抜けていくところに面白みがあるのだと思う。
そのプランBがまた他プレイヤーの意図を知らず知らず妨害して複雑系の相互作用になっていくところが全体像としては面白い気がするが、個々のプレイヤーとしてはやりたいことができないストレス状況でひとりで苦しむだけという話なので、まあボードゲーム初心者にはしんどいかもしれん。

カタンモノポリーだと停滞しかけた場で奇跡のような交渉をまとめあげて巻き返し、というような可能性もあるけれども、アグリコラだと頼るは自分のみ。そのわりにいまひとつ、勝ったときのカタルシスは薄い気がするんだけど、どうなんだろう。もうちょっと多人数プレイしてみないとそのへんはわからんのかも。

「のっけめし 〜 ごはんをおいしく食べるのっけもの153」

のっけめし―ごはんをおいしく食べるのっけもの153
上條 雅恵
竹書房
売り上げランキング: 1939
おすすめ度の平均: 5.0
5 のっけてのっけてのっけまくれ!

ひさしぶりにいいレシピ本を買ったので思わずレビュー。

ごはんにのっけておいしいおかず小品153レシピ。
1頁に1レシピのフルカラー調理例が115、文字だけのかんたんレシピが38。とにかく「手早く作ったおかずをあつあつごはんにのっけて食う」ということだけが共通項で、和洋中韓から飲み後の締め用まで、具材も肉魚ベジタリアンとジャンルはさまざま。

本書の良いところ3点。

  • かんたん。

手順はすべて1、2、3の3手順にまとめてある。まあ多少無理というか、3手順めが「ごはんにのせる」だけのレシピもあれば「2の材料を焼いてごはんにのせて大根をおろしてのせる」のレシピもあるけれど、すくなくともセンテンス3つにはおさまる。材料もだいたい3〜5種類。冷蔵庫にあるもので巻末の食材早見からすばやくレシピがひける。

  • 小さい。

新書サイズ。とりあえず腹も減ったし有りものでぱっと何かつくって食べよう、っていうときに片手でぱらーっとめくれる。小さいのにフルカラー。

  • そして何より写真がうまそう。

俺は料理するときに基本的にレシピ通りそのまんまは作らないので、どんな料理本でも、基本的に味つけは参考程度にしかしないから、このレシピの味付けが良いかはよくわからない。だがこの本のレシピの良いところは、非常に「歯触り」というか、テクスチャに気を使っておるように感じるところなんだね。適当すぎるぶっかけめし、いわゆるねこまんまがよく陥るのは、どんなにうまい味付けでも最初から最後まで同じ味、同じ歯ごたえだと飽きる、という罠。焼いた肉の下にちょっと菜ものを敷くとか、はじかみやお新香を載せるとか、炒め物はなにかシャキっとした具を最後に入れるとか、そういう工夫をすると飽きが遠ざけられ、最後まで旨く食える。おかずを別皿にせずにごはんにのっけてしまうわけだから、わざわざご飯とおかずの境目を難しくしているのに、でも完全にぐちゃっと混ぜてしまうとうまみが損なわれてしまうのだ。このなんというか、「親しき仲にも礼儀あり」的ごはんおかず距離感がのっけめしの極意であって、このレシピの調理例はきちんとそういうところに気が回されていて、だから写真を見るだけでうまそうなのだ。

ほかにも、「のっけめしを旨く食う」ために欠かせない「うまい飯の炊き方」だとか薬味の使い方保存の仕方だとかの小コラムもうれしい。読んでいてのっけめしへのテンションが高まってくる。

これだけ良い本なのに個人的に残念なのは著者名が明記されていないところ。いちおう奥付手前に、「レシピ&調理&テーブルコーディネート」というクレジットで上條雅恵さんが写真つきクレジットされていて、Amazonの著者欄もこの方になっておるんだけれども、俺としてリスペクトしたいのはこの「うまいのっけめし」というテーマを定めてこういうスタイルのレシピ本に纏め上げた人なんだよなあ。具体的には、

素材やジャンルにこだわらずに、自由な発想でのっけましょう。おいしいごはんに合わないものなどありません。さあ、あなたもレッツのっけ!(p.16)


というすばらしい煽りを書いてのけた人は誰か、ということなんだ。
企画・編集クレジットの杉田淳子さんか。はたまた上の上條さんか。
書誌学的にもこのへんきっちりしておいてほしかったなあと思う次第であります。

料理が面倒くさくて納豆ご飯ばかり食べている独身者や、うちのように共働きで夜が遅いおふたりさまなどにおすすめです。