「のっけめし 〜 ごはんをおいしく食べるのっけもの153」
ひさしぶりにいいレシピ本を買ったので思わずレビュー。
ごはんにのっけておいしいおかず小品153レシピ。
1頁に1レシピのフルカラー調理例が115、文字だけのかんたんレシピが38。とにかく「手早く作ったおかずをあつあつごはんにのっけて食う」ということだけが共通項で、和洋中韓から飲み後の締め用まで、具材も肉魚ベジタリアンとジャンルはさまざま。
本書の良いところ3点。
- かんたん。
手順はすべて1、2、3の3手順にまとめてある。まあ多少無理というか、3手順めが「ごはんにのせる」だけのレシピもあれば「2の材料を焼いてごはんにのせて大根をおろしてのせる」のレシピもあるけれど、すくなくともセンテンス3つにはおさまる。材料もだいたい3〜5種類。冷蔵庫にあるもので巻末の食材早見からすばやくレシピがひける。
- 小さい。
新書サイズ。とりあえず腹も減ったし有りものでぱっと何かつくって食べよう、っていうときに片手でぱらーっとめくれる。小さいのにフルカラー。
- そして何より写真がうまそう。
俺は料理するときに基本的にレシピ通りそのまんまは作らないので、どんな料理本でも、基本的に味つけは参考程度にしかしないから、このレシピの味付けが良いかはよくわからない。だがこの本のレシピの良いところは、非常に「歯触り」というか、テクスチャに気を使っておるように感じるところなんだね。適当すぎるぶっかけめし、いわゆるねこまんまがよく陥るのは、どんなにうまい味付けでも最初から最後まで同じ味、同じ歯ごたえだと飽きる、という罠。焼いた肉の下にちょっと菜ものを敷くとか、はじかみやお新香を載せるとか、炒め物はなにかシャキっとした具を最後に入れるとか、そういう工夫をすると飽きが遠ざけられ、最後まで旨く食える。おかずを別皿にせずにごはんにのっけてしまうわけだから、わざわざご飯とおかずの境目を難しくしているのに、でも完全にぐちゃっと混ぜてしまうとうまみが損なわれてしまうのだ。このなんというか、「親しき仲にも礼儀あり」的ごはんおかず距離感がのっけめしの極意であって、このレシピの調理例はきちんとそういうところに気が回されていて、だから写真を見るだけでうまそうなのだ。
ほかにも、「のっけめしを旨く食う」ために欠かせない「うまい飯の炊き方」だとか薬味の使い方保存の仕方だとかの小コラムもうれしい。読んでいてのっけめしへのテンションが高まってくる。
これだけ良い本なのに個人的に残念なのは著者名が明記されていないところ。いちおう奥付手前に、「レシピ&調理&テーブルコーディネート」というクレジットで上條雅恵さんが写真つきクレジットされていて、Amazonの著者欄もこの方になっておるんだけれども、俺としてリスペクトしたいのはこの「うまいのっけめし」というテーマを定めてこういうスタイルのレシピ本に纏め上げた人なんだよなあ。具体的には、
素材やジャンルにこだわらずに、自由な発想でのっけましょう。おいしいごはんに合わないものなどありません。さあ、あなたもレッツのっけ!(p.16)
というすばらしい煽りを書いてのけた人は誰か、ということなんだ。
企画・編集クレジットの杉田淳子さんか。はたまた上の上條さんか。
書誌学的にもこのへんきっちりしておいてほしかったなあと思う次第であります。
料理が面倒くさくて納豆ご飯ばかり食べている独身者や、うちのように共働きで夜が遅いおふたりさまなどにおすすめです。